『魔震』の際にも軽度の損壊で済んだ歌舞伎町は、以前同様、新宿最大の娯楽街であると同時に危険地帯でもあります。不用心に人気のない横丁か廃ビルの一つに潜り込んだりすれば生きて出られる可能性は万に一つもありません。

噴水広場のまわりには奇怪なユニット建築群が乱立しており、お碗を積み重ねたような、全階踊り場の「ディスコビル」、わずかな風にも揺れしなるためスリルを満喫できるが、日に何人かは転落死するという窓ガラスのない「ヤナギビル」、殺傷力を弱めた武器での戦いに解放されている、「ミラノ座」の敷地を埋めたドーム状の建物「戦場（バトルフィールド）」などが有名です。

また、「歌舞伎町流砂」「迷宮横丁」など、さまざまな怪奇スポットを内在しており、まさに『魔界都市』を象徴する街であるといえるでしょう。

『新宿危険地帯』ベスト３のうちの一つ。「新宿流砂」とも呼ばれています。

瓦礫の山のみでなく大地そのものが、幅120メートル、長さ500メートルの帯となり、毎時12.3キロの速度で地上を流れ、地へと沈み込んでいっています。その眺めは、まるでひとつの街そのものが土に溶けて流れ去るような、幻妖極まりない光景であるといわれます。
原因は『魔震』によって地層の分子密度に変化が生じたためとされています。

早めに気付いたため、犠牲者の数は100名単位に留まっています。ただ、この自然現象のもっとも奇怪な点は、沈み去ったものがほぼ３年と４ヵ月半の周期で再び地上に浮かび上がってくることなのです。そのため、犠牲者の白骨が今も瓦礫とともに大地を経巡っているのです。

さまざまな人々や妖物であふれかえる歌舞伎町ですが、この流砂一帯の廃虚へだけは立ち入る人も獣もいません。

200坪ほどの敷地に、黒い石群が無造作に配置されている広場です。

高さ１メートル足らずのものから５メートル以上、数十トンに及ぶもの。完全な球体や楕円形、菱形、正方形、穴の空いた小石から、怪異な彫刻の施された大岩まで、狂気の芸術家が思う存分腕をふるったとしか思えない「作品」が、その数じつに307を数えます。
「魔震」の直後、一週間以内のある日に、忽然と現われた巨石群や広場を「美術館」と呼ぶのは、その展示された「作品群」がまぎれもない天才の作品だと、あらゆる専門家に激賞されたためです。

ただ、その醸し出す雰囲気のあまりの不気味さのため、足を運ぶ人は少ないようです。

『最高危険地帯(MDZ:Most Dangerous Zone)』
新宿中央公園、新宿御苑に比肩する危険地帯です。
『魔震』の際、一帯すべてが倒壊し何一つ残らない平坦な荒野が形成されたため、＜難民居住区＞として真っ先に難民キャンプが設けられ、半年後にはプレハブ住宅が軒を連ねました。
しかしその後、旧フジテレビの対面にあった遺伝子研究所の崩壊が招いた怪生物の跋扈により、正規の手続きを経た入居者はすべて逃げ出してしまい、現在では総数670名の浮浪者（難民）が居住しています。
住宅地の外縁は妖物を排除すべく、50万ボルトの高圧電流が通電された鉄条網でおおわれていますので注意が必要です。

新宿にはいるためには、四ツ谷駅、早稲田弦巻町、西新宿４丁目の３ヶ所に設置されたゲートを通る以外方法はありません。

新宿の外周をめぐる深さ50数km、幅20mの地割れのうえに、車道４車線、左右に歩行者通路を持つ20m幅の鉄橋が架けられています。そして橋の左右には、区内の魔物逃亡に備えて、コンピュータ制御の30mmバルカン砲５基の他、レーザー砲、火炎放射器、ミニ・ミサイル・ランチャー、大型粒子砲などを設置した、強化コンクリートで覆われた高さ５mの電子監視塔が建っており、橋をわたる人々や車を、ハイ・ビジョン・ビデオ・カメラで録画しています。
基本的には24時間出入り自由なのですが、夜に新宿に入ることは命の保証がありませんのでお薦めできません。

また、各ゲートの周囲には、大亀裂の凄まじさを眺望できるように、区が設置した小さな公園があります。観光コースの定番ですので、是非立ち寄ってみましょう。

なお余談ですが、大亀裂の眺望に関しては、東中野に通じる中央線のレールが、崖っぷちから２メートルも伸びた先で逆落としになっている北新宿の一角が特に人気のスポットになっています。

国連が魔界都市へ大規模な調査団を送り込む見返りとして建設した病院です。

さすがに国連による施設だけあって、設備に関しては超一流です。
奇怪な症状でなければ、メフィスト病院でなくこちらを訪ねてみるのもよいかもしれません。